ついに最終回を迎えた愚連隊。
そのあらすじと、感想です。
以下、ネタバレ注意
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事件の真の黒幕はデノーメル准将だった。
ウェイン中将が戦後の利権に向けた策を練っていると知り、
彼は「ガルマ・ザビ計画」を持ちかけたのだ。
すべてが順調に進む中の、ただ一つの誤算。
それは、実直に任務を遂行していくであろうサキ・デッサウ少佐が
計画に気づき、並々ならぬ正義感を発揮し真相に迫ったことだった。
「何が君をここまで駆り立てたのかね?」
デノーメルの問いに、サキは
『上位も下位もない。ただ罪無き者達を救え』というシャマラン先生の教え、
生き様を思い出したと答える。
だが、デノーメルはそれを否定する。
かつてシャマランが目指したのは、地球と宇宙の融和。
膨大な数のサイドを地球連邦政府が支配する今のシステムでは、いずれ構造疲労を起こす。
各サイドを国家として独立させ、その上で国交を結び安全保障と経済の安定を図る。
かつて先生の下でサキ、デノーメルが夢見た思想であった。
しかし、今次大戦でスペースノイド(サイド3)が50億の人間を殺してしまった以上、
それは望めなくなってしまった。
ならば、どうすべきか?
デノーメルは自らの考えを語る。
大戦で地球が失った人的資源、産業、インフラ。
その再建をあらゆるサイドからの資本投下で行わせ、
地球経済を宇宙に依存させることで、実質的にスペースノイドが地球を支配できる。
その結果、スペースノイドの独立は早期に成される。
その上で地球宇宙間の国交を結べば良い。
そして、デノーメルは物流と通商の要であるキャリフォルニアを収め、取り仕切る。
しかし、それはもはや共存ではなく、宇宙による地球の逆占領。
怒るサキにデノーメルは銃口を向ける。
「シャマラン先生の理想は、こうして実現される。安心してあの世に行きたまえ」
その時、ビッグ・トレーの警備兵が室内に突入する。
ポノワ中尉が隠しマイクを仕込み、音声を中継していたのだ。
警備兵が詰め寄るが、そこでビッグ・トレーが大きく揺れる。
ザンジバル爆弾投下を避けるため、侵攻軍が急速転進を始めたのだ。
スキを見て逃げるデノーメルを、サキはを甲板まで追い詰める。
「お前をネメシスの指揮官にしたのは間違いだった…」
そして、かつてシャマランを目の前で死なせた…守りきれなかったサキを責める。
その罪を認めるサキ。
しかし、サキもまたデノーメルを責める。
先生の理想を歪めて受け止め、先生の理想のためだとして
何千もの兵士を無駄死にさせたことを。
「これ以上、先生の名を汚すことは許さん」
銃口を向けるサキ。
そこへ割って入ったのは…ジム・ストライカー。
ドダイを奪って帰還した、ユージ・アルカナ中尉であった。
その傍らには偽ガルマ・ザビ。本名『マルティン・シャマラン』の姿もある。
「『確保』です。殺しちゃいけません」
「そうだな、中尉」
ユージの話によると、
キャリフォルニア・ベースの撤退派と抗戦派の間で話がつき、
撤退派を乗せザンジバルはサイド3へ上がっていったという。
ザンジバル爆弾の脅威は去った。
キャリフォルニア・ベース攻略作戦の再開に艦上は沸き立った。
サキは、思う。
デノーメルは、唯一の誤算は私だと言った。
しかし、それは正確ではない。
本当の誤算は、私がユージと出会ったことだ、と。
激戦の末、連邦軍はキャリフフォルニア・ベースを制する。
そして12月31日のア・バオア・クーの陥落をもって、
ジオン独立戦争は終結した。
そして宇宙世紀0080年、2月。
北米地球連邦軍裁判所では、
ガルマ・ザビ亡霊事件の裁判が行われようとしていた。
連邦の復員兵、ジオンの一般人などたくさんの聴衆が押し寄せる厳戒態勢の中、
マルティンが連行されていく。
とびかう罵声を見かねたユージは彼のもとに駆け寄る。
そこへ、雨合羽を着込んだ子供が一人。
「ガルマ様の名を騙り、父を殺した…仇…」
グエイドン中将の娘だった。
銃を取り出し、マルティンに向けて発砲する!
…銃弾は、ユージが受けていた。マルティンを庇ったのだ。
「誰が撃った!?」「ジオンの娘がいるぞ!」「ジオンはまだやる気だぞ!」
一瞬にして場は騒然となり、暴徒と化したアースノイド、スペースノイドの乱闘が始まる。
重症を負いながらも乱闘を止めようとするユージを、サキは制しようとする。しかし…
「この場の人たちを守れなかったら、オレはもう、二度と仲間を守るなんて言えなくなりますよ」
その言葉で、サキはユージを止められなかった。
群集に、ユージは叫ぶ。
「オレは無事だ、その子は誰も殺しちゃいない!」
「まずは隣にいる奴を見てくれ。よく見りゃそいつは何の事はない只のヤロウだ。
ぶん殴る前にいっぺん、そいつに話しかけてみな。やっぱりそいつは案外ただの奴だぜ…」
重症を堪え訴えかけるユージに、群集は耳を傾ける。
サキは自問する。なぜユージを止めなかったのか?
それは、自分を目覚めさせたゾンビーの…ユージの力を見たかったのかもしれない。
ついに倒れるユージ。
群集が、ネメシス隊が、そしてサキが駆け寄る。
「死なせはせん。今度こそ、必ず」
機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊 完
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◆シャマラン先生の遺志
すでにいろいろと話題になってますが、
デノーメルの案はガンダムユニコーンでフル・フロンタルが語ったものによく似てますね。
(ネタが被ったのは、まあ偶然でしょ)
経済で地球を支配するという発想は面白い。
シャマランの遺志を歪めて受け止め、私利私欲に走ったとはいえ
デノーメルが先生の理想を実現したかった、という気持ちは本当だったんだろうなぁ。
シャマランの思想自体を否定していなかったこと、
シャマランを目の前で死なせたサキを責めていることから、
本当にシャマランを慕っていたんだと思う。
しかし、理想のために無駄な犠牲を多く払ったのは事実であり
それは、先生の名を汚すことになる。
サキもまた、シャマランを慕っていただけに許すことができない。
同じ師の意思を継ぎながらも大きくすれ違ってしまった二人の、悲しくも素晴らしいドラマでした。
◆ユージ
困難に負けず、信念を貫くユージ。
その姿に勇気づけられる、周囲の人物。
いわゆる主人公の成長物語…ではなく、仲間たちの成長物語でもあったんですね。
物語のラスト、かつてのシャマランのように場を治めるユージ。
「難しい事は言えない…」と言いながら、自分の言葉で語るユージの姿が素敵デス。
◆サキ
甲板上でデノーメルを撃とうとしたことを、止められた件にて。
もしあの時射殺していたら、きっとサキはやりきれない気持ちで終わっていただろう。
しかし、射殺はユージによって止められた。
ユージはサキの心を救った、と言えるのではないでしょうか。
ラスト、ユージに駆け寄るサキ。
「死なせはせん。今度こそ、必ず」
と強く思います。
かつて先生が死んだときと同じシチュエーションで、トラウマからの復帰。
いい構成だなぁ。
◆マルティン・シャマラン(タラ)
・タラの本名が明かされました。やはりシャマランの孫だったようですね。
今回、一切のセリフがありませんでいたが…
・ザンジバルが宇宙へ帰ったと聞いた時の、彼の心境やいかに。
何も成せなかったと、やりきれなくなったのか?それとも、実はほっとしたのだろうか?
妄想が尽きません。
・ユージとタラの決着は先月号のまま、ということか?
何かしら、タラ自身が納得のいく決着を期待していたのですが、一切が語られず。
今回、そこが残念なところです。
そんな中、注目すべきは…
「確保」されたはずのタラが、ユージによって運ばれた時、拘束されていなかったこと。
手錠が手元に無いとしても、縄で手を縛るとか、本来はすべきだと思う。
しかし、ユージは拘束しなかった。ユージらしいといえば、ユージらしい。
…単にタラが観念していたから、だろうか?
ともあれ、このシーンが二人の間の決着を物語っていると、言えるのかもしれませんね。
・あと、重症のユージの肩を抱えるラストシーンにて。
タラも、ユージによって心を救われた一人。
今度はユージへの恩を返す番です。
描かれなかったシーンでは、彼はどのように動いたのだろうか…。
◆グエイドン中将の娘
結局、最後まで不幸だった子でした。
自ら撃ってしまったユージに庇われる格好となった彼女。
ユージの最後の言葉に、彼女も何か変わる事ができるのだろうか。
◆ネメシス隊
生きてたのかよ!!
いや、ホークさんやジャンは多分生きてるだろうと思ってましたよ。
機体はピクシーにボロボロされてましたが、コックピットは無事だったので。
問題はロックですよロック!
アレで生きてるってどんだけ超人ですかアンタは。
生還が嬉しい反面、何か腑に落ちないなぁ。
◆キャリフォルニア・ベース
・撤退派はサイド3へ帰り、抗戦派が残ったことでキャリフォルニア・ベースの戦いは行われました。
史実との辻褄はあったわけですね。
・ブルーディスティニーのシナリオにあった
「宇宙へ、一人でも多く仲間を帰すために戦うジオン兵」という要素は、どうだろう?
これまでの流れだと、サイド3へ帰る手段はザンジバルただ一機という描写でしたが、
今回のセリフの中に「先導艦として」とありました。
つまり、HLVやシャトルがまだ残っていて、ザンジバルに乗り切れなかった兵士、物資などがあがる
後続がある、と捉えていいんでしょうかね。
それなら、ブルーのシナリオとも辻褄があう。
さらに妄想を広げるならば…
ブルーのシナリオにおいて死力を尽くして撤退する部隊を守っていた地上部隊は、
あれだけいがみあっていた撤退派のために戦っていた、ということになるわけで。
ユージは「ナシがついちまったようでして…」と言っていたが、
もしかしたら両者の間で熱い友情と和解があったのかなー、なんて考えると面白いですね。
・今回、ほぼ唯一の戦闘シーン。
一枚絵でも妄想をかきたてる迫力のワンシーンですね。
左端に、キャリフォルニア・ベースの象徴ともいえるマスドライバーがチラっと映っているのが、
個人的には嬉しい限り。
◆その他
・「タマーム・シャマランの孫の起こした事件だけにその注目度が高い」
のセリフから察するに、宇宙世紀ではシャマラン先生は結構有名人だったようですね。
・陰謀の解決はよくまとまってたけど、その他の所が端折ってた感じ。
特にユージとタラの絡み、撤退派と抗戦派の和解のあたりが
描写不足な気がしました。
単行本で加筆修正とかあるんでしょうか?
それとも、この辺のウラ話は『アッガイ大陸横断』で語られるのかもしれませんね。
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えー、こんなところでしょうか。
毎回楽しませてくれた「オレら連邦愚連隊」も、今回でオシマイです。
曽野由大&クラップス、本当にありがとう!!!
次回作も期待してるぞ!
最終巻は8月26日!
緑色のピクシーが目印です!
[4回]
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