今回より攻略本の紹介です。
かつて講談社より発行されたゲーム雑誌『覇王マガジン』の編集部による攻略本で、
ブルー3部作それぞれの攻略本が出版されています。
今回は
『覇王ゲームスペシャル[69] 機動戦士ガンダム外伝Ⅰ 戦慄のブルー テクニカルガイドブック』
をお送りします。
…といっても、内容は普通に攻略本です。
記事自体には、あえて特筆することはありませんが…
この本には攻略情報以外に、大きな要素があります。
それは、ゲームのシナリオ担当の千葉智弘による
オリジナル短編小説が載っていることです!
と、いうわけで今回から数回に分けて、
オリジナル短編小説の内容について紹介してみたいと思います。
短編小説はさまざまなキャラクターの視点で描かれており、
原作ゲームでは描かれなかった、物語の裏側が楽しめます。
挿絵は、ゲーム画面の写真、
高山瑞穂氏のマンガからの流用イラスト、
及び今回のための書き下ろしイラストで構成されています。
また、皆川ゆか氏が小説版執筆にて、そして高山瑞穂氏が漫画版を描くにあたり参考にしたと思われる箇所もあるので、
比べてみるのも、面白いかもしれません。
第1巻では、ユウ・カジマとアルフ・カムラの二人の視点から、
一年戦争開戦前後~ブルー1号機の暴走までが描かれます。
今回は全8シーンのうち、4までを紹介します。
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シーン1・ユウ/U.C.0078.12.27
ユウ・カジマ少尉とその相棒、フランク。
二人は宇宙戦闘機で、とある廃棄コロニーの調査を行っていた。
コロニー周辺で不審な、大量のミノフスキー粒子が検出されたためである。
調査の中、二人は一つ目の巨大な人型ロボットと遭遇する。
”巨人”は廃棄コロニー内を自由自在に動きユウたちを翻弄。
フランクはミサイルを発射するも、レーダー波を攪乱するミノフスキー粒子の中にあっては、
全くの役立たずであった。
パニック状態のフランク。ユウは機を急旋回させるも巨人の持つマシンガンの攻撃を受ける。
機体は爆発、四散しユウは空中に放り出され、気を失ってしまった。
次に目覚めのは、軍病院のベットであった。そこでユウは、一人の”大尉”の面会を受ける。
大尉からは、さまざまな事実を知らされることとなった。
”巨人”の正体は、サイド3のジオンが開発した新兵器「モビルスーツ」だということ。
近いうちに、ジオンと戦争になるだろうということ。
そして、相棒のフランクが死んだこと。
大尉の話によると、連邦軍もモビルスーツを脅威とみなしており、
対抗してモビルスーツの開発をスタートさせることになったという。
大尉は、モビルスーツと交戦し、初めて生還したというユウをスカウトに来たのだ。
モビルスーツの力を、身をもって知ったユウ。
復讐なんて、がらじゃない。
しかし、あの巨人を倒せる力が得られるのなら…モビルスーツのパイロットも悪くない。
ユウは誘いを受けることにした。
それは、後に「一年戦争」と呼ばれる戦いの、一週間前の出来事であった。
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シーン2・アルフ/U.C.0079.9.23
連邦軍のモビルスーツ”ジム”の開発が始まった。
アルフ・カムラは機体整備の仕事に追われる中、整備班長から”ニュータイプ”の話を聞かされる。
それは、宇宙時代に適応した新人類。戦闘ではビームすらよけてしまう…
技術屋としては、とても信じられない話だった。
そんな”ニュータイプ”の戦闘能力を研究していたジオンの科学者が連邦に亡命、
研究成果としてモビルスーツ用のOSを持ち込んだため
それを組み込んだ機体を製作することになったという。
そして技術屋としての腕を見込んだ班長は、そのプロジェクトにアルフを指名してきたのだ。
レビル将軍が力を入れているプロジェクトであり、高性能のスペックを目指すために
生産性、コストは度外視していい…とのことだったが、
ジムの量産に向けて忙しい時期だけに、面倒事であることには違いなかった。
(要は、自分がやりたくないから俺に押し付けるんだろう?)
アルフは内心舌打ちをしつつ、その申し出を受けることにした。
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シーン3・ユウ/U.C.0079.9.23
モビルスーツのパイロット候補生として、さまざまな経歴の者が集まった。
戦闘機乗り、ヘリのパイロット、戦車の砲撃手など…
皆、もとの部隊でトップクラスの腕の持ち主だった。
だが、訓練用の機材は間に合わせのものばかりだった。
本物のモビルスーツなどなく、シミュレーターでの訓練の日々が続いていた。
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シーン4・アルフ/U.C.0079.10.3
ジオンからの亡命者、クルスト・モーゼス博士。
この日、アルフは初めて博士と会っていた。
60に近い年齢のはずだが、自分よりもガッシリした体格であり、
その風貌・言動から”マッド・サイエンティスト”というのが最初の印象であった。
アルフはクルストの著書『人類は”EXAM”になれるのか』という本を押し付けられる。
クルストの理論によると、ニュータイプとは来るべき人類との戦いのために進化した者達、
ということらしいが、他のニュータイプ研究者からは異端視されていたようだ。
(そのせいでジオンから追い出されたのは想像に難くなかった)
EXAMに関する博士の話をまとめると、次のようになる。
・ニュータイプの戦闘能力を純粋に抽出するシステムをもってニュータイプに対抗しようというのが”EXAMシステム”である
・研究に莫大な時間と資金が浪費されるも開発が難航する中、ある日事故が起きた。
事故の原因は不明だが、協力していた一人のニュータイプの少女が犠牲となり、
システムが突然機能するようになった。
・EXAMを搭載したMSはごく普通のパイロットが操縦してもニュータイプ並の動きができ、
さらに、あくまでコンピュータ用ソフトなので、簡単にモビルスーツに組み込むことが出来る。
・しかし、EXAMは機体の性能を限界まで引き出すため、機体とパイロットにかかる負担が非常に大きい。ジオンでの実験では5分以上耐えたことがなかった。
この話が本当なら、ジオンが博士の亡命を許してしまうとも思えない。
システムに対し懐疑的になりながらも、アルフは仕事に取り掛かる。
RGM-79[G] 陸戦用先行量産型ジムをベースに行った予備実験では
EXAMはウソのように機体性能を引き出した。が、機体の出力が全く足りなかった。
博士の言った通りだった…
そのため、システムを残した頭部はそのままに、陸戦用ジムより上位の機体である
RX-79[G] 陸戦用量産型ガンダムをベースに使用することになった。
さらに、レビル将軍の手配で、実験段階にあったマグネット・コーティングを施すことができた。
あらゆるものを詰め込み、性能をあげてゆく機体。
初めは嫌々ながら付き合っていたプロジェクトにアルフは次第にのめりこんでいく。
そして機体は完成した。
クルストは完成した機体の全身を蒼く塗装し、こう命名した。
ブルーディスティニー(蒼い運命)と…
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◆シーン1より
・1年戦争開戦直前のユウ・カジマが描かれています。
ザクと遭遇してモビルスーツの脅威を思い知る、という流れは
皆川ゆか小説版でも描かれていました。
皆川版では、発砲が戦争に繋がる恐れがあるため、双方、攻撃を仕掛けることはありませんでしたが、宇宙戦闘機では不可能な動きを目の当たりにすることで、脅威を抱いています。
・高山瑞穂による漫画版にも登場した”フランク”の名前があります。
漫画版ではユウの士官学校時代の同期であるエイミーの亡夫という設定でした。
漫画版と短編小説版のフランクについての接点は不明ですが
繋がりを想像してみるのも、面白いかもしれません。
ちなみに、ここでユウが乗る戦闘機は複座式。
ユウが操縦、フランクがガンナーです。
・注目すべき点は、”ユウ・カジマが戦う理由”が描写されていることですが、
これは「短編小説版の味付け」として考えるのが正しいかと思います。
その理由として…
今現在、ユウ・カジマというキャラクターは小説版・漫画版などの要素を含み確立した感がありますが、
そもそもユウはゲームのプレイヤーが感情移入しやすいキャラクターとして作られ、性格・素性などの設定は最低限しかありませんでした。
それらはプレイヤーの想像に任せる、というのが当初のスタンスであり、
彼の戦う理由もまた、しかりでした。
設定資料集の千葉智弘氏のコメントにも、そういった趣旨のコメントがあります。
「プレイヤーの想像に任せる」という原則がある以上、
短編小説版でのこの描写は、小説形式で書くための演出であり、
プレイヤーの想像を侵害するものではない…と、僕は思います。
・「連邦軍もモビルスーツを脅威とみなしている」といった描写がありますが
連邦軍はむしろ、モビルスーツを「ジオンの人形遊び」として軽くみていました。
ただ、開戦以前から連邦もモビルスーツの研究をしていた、という設定もあるので
これについては連邦の”ごく一部”が脅威とみなしていた、と考えるべきでしょうか。
・話に登場する”大尉”については、
単にユウをモビルスーツ研究部門に導かせるために用意したキャラであって、
特に詳細な設定はないと思われます。
◆シーン2より
・アルフがEXAMに関わるきっかけが描かれています。
整備班長は、周囲から「おやじさん」と呼ばれ、慕われていますが
そんな彼すらアルフは苦手。対人関係が苦手な、いかにもアルフらしい描写があります。
・班長の話す”ニュータイプ”について気になる点が。
「戦闘ではビームをよける」と言ってますが、これはさすがに早すぎでは?
戦場でのニュータイプの活躍、つまり宇宙世紀0079の頃だとアムロ・レイをはじめホワイトベース隊の活躍にあたりますが、
それが広まるのは早くてもガルマ・ザビを倒した辺りからなので、
ニュータイプの活躍に尾ひれがついたもの…と考えても、9月では早すぎる
ましてビームを避ける様な戦闘には、終盤まで遭遇していません。
あと、この頃のニュータイプ論といえば
かつてジオン・ズム・ダイクンによって提唱されたものぐらいしかなく、
一般人の認識としては「宇宙という新しい環境に適応した人類」程度のものだったのではないでしょうか。7/2*追記*宇宙世紀0079、9月頃の”ニュータイプ”への一般の認識について。
戦場でのニュータイプの活躍=ホワイトベース隊の活躍、と書いてしまいましたが、大事なことを失念していました。
それは、一週間戦争のジオンのエースパイロットの活躍です。
驚異的な戦渦を挙げた者、戦艦のメガ粒子砲を避けることが出来た者を
ニュータイプ能力によるものとジオン公国軍は着目してわけで、
それなら「パイロット適正の高さ=ニュータイプ能力によるもの」という
認識は一年戦争初期からあったのではないだろうか?
その話に尾ひれがついて前述の班長の発言に繋がった、とするなら
班長の発言に矛盾はなくなります。
ガンダムエース2009年8月号のデータガンダム「ララァ・スン」及びニュータイプ関連の特集を踏まえて再考してみました。
◆シーン3より
ありあわせの設備だけで苦労する様子や
モビルスーツをOSが動かす仕組みについて、簡単な描写があります。
◆シーン4より
アルフとクルスト・モーゼスの初対面の様子。
そういえば、この二人の絡みは漫画版、小説版ともにほとんど無いので
このシーンは結構貴重かもしれません。
また、漫画版・小説版では寡黙な様子だったクルストですが、
短編小説ではかなりフレンドリーに接してきます。
それに圧倒気味のアルフもまた面白い。
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シーン5~8は、また次回。
[2回]
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