先日のガンダムレガシーのコラムにありました、第2次ネオジオン抗争の頃のユウ・カジマの話。公式設定として認知された感がありますが、この設定は、原作ゲームの段階では存在していませんでした。
今回は、それが認知されていった経緯について解説してみたいと思います。
と、その前に。当ブログのスタンスについての話を。
ガンダムの設定というやつは、オフィシャル設定がありながらもそれは日々変化しており、また、未オフィシャル、および非オフィシャル設定でありながらファンの間で共通に認知された設定があるなど、混沌としているのが現状であります。
「知らない間に、いつのまにかこんな設定が」できている。
そういう思いはガンダム・ファンの方なら何度も経験したことがあると思います。
その是非はさておき、「いつのまに」の「いつ」をハッキリさせ、設定の変化した経緯についてまとめ、検証していくのが、このブログでやりたいことです。
まとめるのは、あくまで「THE BLUE DESTINY」についてのみ。
これは単に、僕がこの作品が好きなこと、この作品ならほぼリアルタイムで追っているので変遷についてある程度は知っているから、です。
(ガンダム全体について調べるのも面白そうですが、歴史がありすぎて、個人で行うのはほぼ不可能でしょう)
おそらく、このブログの情報はガンダム世界の検証には役に立たない情報になるかと思います。
しかし、ガンダムの劇中設定の検証サイトが多い中、ウチみたいなスタンスのサイトがあってもいいのではないか?
「いつのまに」の「いつ」が分からずモヤモヤするのを解消させるための情報というのも、必要なのではないか?
という思いで、やっています。
(でも、たまには劇中設定の検証なんかもやりたいですね)
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◆宇宙世紀0093年のユウ・カジマ
そもそも、「第2次ネオ・ジオン抗争にユウ・カジマが連邦軍として参戦した」という話はどこが初出なのか?これについては、原作ゲームをAランクでクリアした方なら、一つ思い当たるフシがあると思います。
そう、原作ゲームを最良の成績でクリアした場合に見られる、グッドエンディングです。
エンディングのナレーションにて「第2次ネオ・ジオン抗争の後、ユウ・カジマ大佐は軍を退役した」とハッキリ明言しています。
しかし、いじわるな見かたをすると「参戦したとは言っていない」とも言え、具体的ではありませんでした。
そして次に描写がされたのは、97年発行の小説版です。
ここで「ユウ・カジマ大佐は
”ジェガン”に乗り、第2次ネオジオン抗争に参戦。
”落下するアクシズに取り付き、ニューガンダムが発する光に弾き飛ばされた”」という、具体的な描写がされました。
これについて、小説版のあとがき、作者の皆川ゆか氏はこうコメントしています。
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この小説のプロローグが『逆襲のシャア』のアクシズ落としで始まることに驚かれる方も多いと思います。
ただ、原作ゲームのエンディングで明らかになるように、主人公たちは単に一年戦争の中だけではなく、あの宇宙世紀の時代を生きた人間なのです。
プロローグの部分は、とりわけ、原作ゲームを評価Aでクリアされた方にニヤリとしてもらえればと思って書きました。---
このように、ユウ・カジマというキャラクター像を深めるためとして、また、ひとつのファンサービスとして書かれたのが始まりでした。
そしてこの段階では、あくまで味付けとしての小説版オリジナル要素といった程度で、オフィシャルではありませんでした。
(※1)
そして小説版オリジナル要素であったものが広く認知されたのが、1998年より続く「Gジェネレーション」シリーズでした。
同作のストーリーは原作ゲームに加え漫画版、小説版の要素を取り入れて構成されており、
「GジェネレーションF」のブルーシナリオのエンディングにて、宇宙世紀0093年のユウ・カジマについて触れられました。
おそらく、原作ゲームよりもGジェネレーションでブルーディスティニーについて知った方も多かったのではないでしょうか?
Gジェネでまとめられた「THE BLUE DESTINY」の概要が広く認知され、その中にあった”宇宙世紀0093年のユウ・カジマ”も、同じく認知されていったと思われます。
その後、”宇宙世紀0093年のユウ・カジマ”はガンダム関係の書籍で触れられ、それが今日のガンダムファンへの認知に繋がり、”半ばオフィシャル化”していったと思われます。
また、各種ゲームの逆襲のシャアシナリオでも、ジェガンに乗ったユウ・カジマが登場するといった演出がされることがあり、それもまた認知へ繋がったのではないでしょうか。
そして2008年の、漫画「GUNDAM LEGACY」。
マンガのシナリオはブルーの原作ゲームのシナリオ担当である千葉智弘氏が手がけており、その千葉氏が”宇宙世紀0093年のユウ・カジマ”を採用したことで、その設定は確固たるものになった、と言えるのではないでしょうか。
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オフィシャル・非オフィシャルという厳密な線引きは難しいため、今回は主に「ファン共通の認知」という面から捉えて
記事を書いてみました。
まあ、Gジェネレーションシリーズで採用されたことが、既に「オフィシャル化した」とも言えますけどね。
次回は、「ギラ・ドーガの腕を掴んだユウ・カジマ」についてです。
これも小説版にあった描写です。が、これは扱いが非常に難しい要素だと思いましたので、
次回にて詳しく検証してみたいと思います。
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(※1)
そういった作者の意図について補足してみます。
以下は2001年に発売された「ガンダムオフィシャルズ」の刊行記念に行われた、サンライズの井上幸一氏との対談形式のインタビューからの引用です。
(記事全文は
こちら)
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皆川 私が公式にしようとしているとか、サンライズに認めさせようどうこうと危惧を持つ人に対して言えることっていうのは、たとえば私がブルーのノベライスやってるじゃないですか。その主人公であったユウ・カジマがアクシズ落としのとき、ジェガンに乗ってるっていう創作をしているわけですよね。ゲーム会社の人に許可をもらってそういうのをつけて。私個人もあのシーンはすごく好きなんで、『GUNDAM OFFICIALS』にも入れたくなりますよ。でも、これは入れちゃいけないから、入れてないんですよ。
井上 この話は重要だよな。これはぜひ載せてほしい。
皆川 だから、その点が一つの規範として。ノベライゼーションで作ったブルーの私の作った設定っていうのは、入れなかった。ゲームの元々ある設定だけを使いました、っていうのは、私のこの本に対する規範。
井上 公式ってことを、ちゃんと真摯に受けとめるためにそういう選択をしたんだと思う。もしもこれがね、公式じゃないものだったら出版なんてできないからね。---
小説版独自の設定は、あくまで”小説版”であり、ガンダムオフィシャルズには載せなかったという旨のコメント。
皆川ゆか氏的には”公認”ではあるが”非公式”な設定である、という認識だったことが伺えます。
引用元サイト:
『機動戦士ガンダム公式百科事典』オフィシャルサイト
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