今回は、先日発売された「GUNDAM LEGACY」の1巻より、ユウ・カジマのエピソード「RECORD 02 蒼き宇宙の彼方に」を紹介します。
ガンダムレガシーの詳細については
こちらを参照。
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RECORD 02 蒼き宇宙の彼方に
宇宙世紀0079年、12月。ルウム戦役の残骸漂うサイド5宙域にて『裁かれし者』…。
2機のガンダム・タイプのモビルスーツが死闘を演じていた。
ユウ・カジマ中尉の乗るブルー3号機の攻撃により、ニムバスのブルー2号機は致命傷を負った。
ニムバスは叫ぶ。
「ここでキサマが勝ったとしても、戦いに終わりなど来はしない!!終わりなど…」
そして、2号機は爆発した。
ユウはヘルメットを脱ぎ捨てる。
勝負は決した。しかし、ニムバスの最期の言葉に、ユウは煮え切らない気持ちであった。
刻はめぐり、宇宙世紀0093年。
グリプス戦役より行方不明になっていたシャア・アズナブル。
ネオ・ジオンの総帥として表舞台に帰ってきた彼は連邦軍に宣戦を布告し、
地球連邦政府の拠点であるチベットのラサに小惑星5thルナを落下させ、これを壊滅させる。
そして次に、小惑星アクシズを地球に落下させようとしていた。
地球連邦軍外郭部隊ロンド・ベルは核ミサイルによる破壊を試みるも、失敗。
アクシズは地球への落下コースをたどっていた。
ユウ・カジマ大佐は地球連邦軍のMSパイロットとして、ジェガンのコックピットに在った。
部下と共にアクシズ落下を阻止せんと奮戦するも、ギラ・ドーガ隊の激しい襲撃にあう。
「いつまで人はこんな戦争を続けるつもりなんだ…」
戦闘の中、通信が入る。
ロンド・ベルはアクシズの分断に成功するも、二つに割れた破片の一つが、大気圏への突入を開始したというのだ。
その報に、ユウは愕然とする。
『大佐、これ以上の作戦遂行は無駄です!残念ですが、アクシズの破片は地球へ…』
「無駄なものか!」
ユウは叫び、バーニアを全開にして、アクシズの先端へ向かっていく。
そこで彼が見たのは、アクシズを押し返そうとする多数のモビルスーツの姿だった。
中には、敵であるはずののギラ・ドーガまでいる。
『離れろ!こんな事に付き合う必要はない!』
何者かの悲痛の通信が届くが、1機もそこを離れようとはしない。
そしてユウもまた、アクシズを押し返そうとしていた。
「そうだよ、そうなんだ!誰にだってわかってることじゃないか!こんなところで地球に育む生命の歴史終わらせちゃいけないってことぐらい!!」
大気との摩擦熱とオーバーロードで、機体は限界に達していた。
「限界か…!」
その時、落下するアクシズの先端から激しい光が発っせられ、アクシズに取り付くMSたちを弾き飛ばしていった。
ユウはその光の中、人の暖かみを感じた。
…アクシズは光に導かれるように上昇していき、落下機動から外れた。
コックピットから出たユウは、ただそれを眺めていた。
そしてユウは、ボロボロになったジェガンを残し、母艦へと帰っていった。
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初出は、ガンダムエース2004年9月号。
Wikipediaにもありますが、単行本化されるまで間があったのは、途中で長期休載があったためです。
ユウ・カジマのエピソードでしたが、EXAMやマリオン関連の話は全く無し。
おもに、宇宙世紀0093年の第2次ネオジオン抗争(逆襲のシャア)でのユウが話の中心になっています。小説やゲームで「逆シャア」のユウは描かれても、マンガという媒体で描かれたのはこれが初めてですね
(そもそも、第2次ネオジオン抗争にユウが参加していたことについては、原作ゲームのエンディングで軽く触れられたのが始まり。小説版でその詳細な描写がされ、以後は小説版を基準にして描かれていきました)
雑誌掲載時からの加筆・修正は特に無いですが、機体や人物の簡単な補足が追加されました。
雑誌掲載時にあったエピソードの解説特集「設定補完ファイル」は未収録。
これは2Pの解説で、ここで第2次ネオジオン抗争についてと、ユウ・カジマ登場作品である「THE BLUE DESTINY」の解説がされていました。
単行本で収録されなかった代わりに、各話の設定を解説する巻末特集「Decode of LEGACY」にて、1P、紹介されていました。
◆EXAM関連の描写
ユウ・カジマというキャラクターにとって重要な要素であるEXAM関連。なぜ、省かれてしまったのだろうか。
私見ですが、単純に物語の構成の都合のためだと思います。
察するに、話の核として描きたいのは「逆シャア」の頃のユウ・カジマの描写。
EXAM事件は既に過去のこととなっているので、そこをあえて描写するのは避けたためではないでしょうか。
また、ガンダム専門の漫画雑誌であるガンダムエースの連載とはいえ、
読者が必ずしも「THE BLUE DESTINY」を知っているとは限らない。
そのため、知らない人のためにEXAM関連の描写して話を詰め込みすぎてしまうよりも、あえてバッサリと切ってしまったのではないでしょうか。
いずれにしても、作品のファンとしては少しガッカリなところです。
◆ギラ・ドーガの腕を掴んだのは誰か?
このエピソードにて、ユウのジェガンが大気との摩擦で飛ばされそうになるギラ・ドーガの腕を掴むシーンはありません。
現在では半ばオフィシャル化した、「ギラ・ドーガの腕を掴んだのは、ユウのジェガン」という設定。
なぜ、その描写が無かったのか?
「尺の都合」といえばそれまでですが、もうちょっと考えてみますと…
詰まる所「半ばオフィシャル」程度だったからではないだろうか?
このあたりの考察もしてみましたが、文章にすると長くなりすぎた&本題と外れるので、また後日改めてUPしたいと思います。
(このブログ、後回しが多いですね。自覚してます。すいません)
◆ユウ・カジマ 23才
先ほども書きましたが、GUNDAM LEGACYは単行本化に際し機体や人物の簡単な補足が追加されました。
それによって、一つ、注目すべき記述が。
なんとそこで、ユウとニムバスの年齢が
初めて明記されたのです!
*(画像準備中)
人物について追加された補足の記述は、以下のとおり。
宇宙世紀0079年のシーン…
『地球連邦軍 ユウ・カジマ中尉(23)』
『ジオン公国突撃機動軍 ニムバス・シュターゼン大尉(24)』
宇宙世紀0093年のシーン…
『地球連邦軍 ユウ・カジマ大佐(37)』
あれ?たしかユウの年齢は一年戦争時は20代中~後半だと設定資料集に書いてあったはずだが?
それですら明記ではなかったのに、LEGACYではハッキリと23歳と書かれました。
うーん、ちょっと若過ぎる気が…。
検証次第ではこの年齢でアリらしいですが。
(既に検証したサイトがありました。この辺についても後日)
ニムバスの「ジオン公国突撃機動軍」の記述について。
ニムバスの所属は、フラナガン機関。そのフラナガン機関がキシリア・ザビ少将の管轄。そしてキシリアは突撃機動軍のトップなの
でこの記述も当然といえば当然ですが、
こうやって明らかに明記された例は、LEGACYが初ではないでしょうか。
◆蒼いジェガン!?
漫画に登場する、ユウが乗ったジェガン。白黒印刷なのでわかいにくいですが、他のジェガンと比べ、若干色が濃いようです。
*(画像準備中)
色が違うのは、もしかして、ユウのジェガンが蒼いからなのか!?
…そうだとしても、LEGACY版アレンジと捉えるほうが妥当でしょう。
◆「人類は戦いをやめられないのか?」
※この項はちょっと本題からそれます
このエピソードで、ユウは「人類は戦いをやめられないのか?」ということについて自問しています。
先日紹介しました「バニングス・リポート」でも、バニングは同じようなことを自問していました。
2号機と3号機の戦いを目撃し、バニングは「人類の戦いの歴史は続くだろう」と、悲観的な結論に達します。
そして、その戦いの当事者であったユウ・カジマ。
彼もその段階では悲観的な様子でしたが、ニューガンダムから発した光につつまれ、
『「人は、変わってゆける」、そう信じられる希望がある』という結論に達します。
もし、バニングが第2次ネオジオン抗争まで生き残っていて、ユウと同じくあの光に包まれていたら、彼の結論も変わっていたのだろうか?
そんな勝手な妄想が膨らみます。
(…ええ、わかってますよ?あのバニングのエピソードは別にオフィシャルじゃないって)
ちなみに、「GUNDAM LEGACY」「バニングス・リポート」両作品について関連は特に無いと思われますので、
「人類は戦いをやめられないのか?」の自問というテーマが被ったのは、単なる偶然かと思います。
◆ハイブリッドな解説
巻末特集「Decode of LEGACY」の解説について。
1P程の解説になっていますが、その内容は漫画版(高山瑞穂版)、小説版、ギレンの野望シリーズの設定を複合したものであり、非常に興味深かったので検証してみます。
・所属部隊の解説
…所属部隊を『第11独立機械化混成部隊』と紹介。
…ジャブロー直属の実験部隊であること。
…2号機がジオンに奪取された以後は実質的に追撃・討伐部隊として機能していく
→これらは小説版準拠の設定、表現。
・ユウ・カジマの乗機の解説
…トリアーエズ。『一説にはセイバーフィッシュ』と解説。
→トリアーエズは小説版。セイバーフィッシュはギレンの野望
…RGM-79ジム。『ユウはこの機体でブルー1号機を倒した』という表記
→漫画版。原作ゲームでは、このあたりの設定はあやふやである。小説版では陸戦型ジム。
…RGM-79Gジム・コマンド。『対ドム戦を想定した改良機』という表記→漫画版
『一説には、蒼く塗装したユウ仕様機があった』という表現→ギレンの野望
…ブルー1号機、3号機→特記なし
…ジェガン。『アクシズを押し上げようとした』という表現→小説版
・人物紹介
…モーリン・キタムラ。『「蒼い稲妻」の二つ名を考えた』という表記
→小説版。
「THE BLUE DESTINY」という作品が紹介・解説される場合、原作ゲームのみならずさまざまな媒体の設定が取捨選択・ミックスされる場合が多くある。
この巻末解説は、その好例といえましょう。
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その他余談。
単行本では「RECORD~」という数え方でしたが、雑誌掲載時は「episode~」でした。
こんなところでしょうか。久々に長い記事になりました。
もっと短く簡潔にまとめるつもりだったのに…。
しかも、漫画本編よりその他の話題の比率が高かったような気が…。
今回残した話題は2つ。
「ギラ・ドーガの腕を掴んだのは誰か?」
「ユウの年齢の検証と、既に検証したサイト様について」
これらについては、後日改めて取り上げます。
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