最終話「茫星(ぼうせい)」
<ユウ・カジマ>
<待ッテイマシタ…アナタヲ!>
キャリフォルニア・ベースに向けて進軍中の連邦軍への、ジオン軍による長距離ミサイル攻撃。それを阻止せんと出撃したユウ・カジマの乗るブルー1号機はEXAMシステムを発動させ、恐るべき力でミサイル基地を壊滅させた。
ユウはその戦闘の最中、翼をもつ少女の幻影を見た。
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フィリップ、サマナらはキャリフォルニア侵攻部隊に編入される。
連邦軍は大部隊を率い、ついにキャリフォルニア・ベースに攻め込んだ。
多数のMSが激突する戦場で、ドムに襲われたフィリップを救ったのは、遅れて駆けつけてきたブルー1号機であった。
そのまま3機の敵MSを撃破するブルー。しかし、ブルーはフィリップらにも銃口を向ける。
「オレにもわからない…だが、ブルーがお前たちも敵だと認識している」
<裁キヲ!罪深キ者タチニ死ヲ!>
ユウの頭に響く少女の声。
激しい攻撃の衝動を振り払うように、ユウは上空に向けて発砲した。
銃声が響く空。EXAMに引き合わされたかのように、マスドライバーの発射台にイフリート改が表れる。
「全ての者に裁きを。それがEXAMの力だ。マリオンの力、返してもらうぞ!」
イフリート改はブルーに斬りかかった!
それを皮切りに、2機は激しい一騎打ちに入る。
<ニムバス!><ユウ!>
ビームサーベルとヒートサーベルが激しくぶつかり、その瞬間、二人の脳裏に映像が飛び込む。
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それは、マリオンという名の少女の記憶であった。
クルストと名乗る博士。
彼の期待に応えるため、戦争を早く終わらせるため、彼の研究に協力するマリオンだが、
クルストはしだいに彼女の能力に恐怖する。
「危険だ!いずれ彼らは我々旧人類を裁く日が来る…!そうなる前に、我々旧人類がニュータイプの力を利用させてもらう!」
マリオンは自分への激しい恐怖と憎悪を感じ、EXAMシステムの中に心を閉ざしてしまった…。
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EXAM機同士の高速戦闘に、双方とも激しく消耗していく。
「ユウ!私に力を貸してください!全てのEXAMをこの世界から消し去るために!」
ユウはサーベルを抜き、イフリート改を斬り付ける!
しかし同時に、ニムバスはグレネード弾を放つ!
弾はブルーの頭部を直撃・大破させ、イフリートもまた、機体を爆発させ、散った。
「やった…のか?マリオン…」
ユウは意識を失う。
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目覚めると、目の前に翼をもつマリオンの幻影が見えた。
「ありがとう。これで2つの私を消すことができたわ…残りはあと…」
「待ったマリオン!君を助ける方法を探そう!諦めるのはそれからでもいいだろ?」
EXAMを巡る激戦は、まだまだ続くだろう。
しかしともかく、一つの戦いは、終わったのだ。
頭部を失い、半壊したブルーに夕陽が照らされる。空には、宵の明星が輝いていた。
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※最新の設定に合わせ、あらすじ中では『キャリフォルニア・ベース』と表記しましたが、
漫画版が出版された当時では『カリフォルニア・ベース』という表記でした。
尺の都合からか、原作ゲーム2巻ステージ2「その名はブルー」、ステージ3「タイムリミット」は
1Pの戦闘描写にまとめられており、最終話のメインは、ステージ5「宿命の戦い」が下地です。
同じく尺の都合からか、これまでの話のペースに比べて最終話は若干駆け足気味な展開の印象があります。
しかし、それでも話はよくまとまっており、また、スピード感ある描写に読み応えがあります。
◆原作ゲームとの違い
・最終和の冒頭で、ミサイル基地の戦闘を終えたブルー1号機は排熱をした後そのまま飛び立っていますが、原作ではオーバーヒートしてその場に各座しています。
・原作ではキャリフォルニア・ベース攻略作戦にフィリップ、サマナに少し遅れて参戦し、共に戦っています。
そして、その段階ではEXAMが発動してないので、仲間を敵とみなしてしまう描写は無く、
ステージ5でイフリート改を相対することで勝手にEXAMが作動します。
(マンガ版では、フィリップを助けに入った段階で既にEXAMが発動している印象を受けます)
◆ミサイル基地での戦闘を終えたブルー。
ブルーがどのように排熱するかがわかる、貴重なカットです。
この後、ブルー1号機は飛び立っています。
(オーバーヒートするまでEXAMを使わなかったからか、単に話の構成の都合かな)
あ、こんな所でも排熱してる!
ここは、現在の設定ではビームサーベル・ラックになっている箇所ですね。
◆その他チェックポイント
キャリフォルニア・ベースに向けて行軍するシーン。
ここでフィリップらは、原作ゲームと同じ機体、ジムコマンドに乗り換えています。
胸にはオリジナルの犬マーキングあり。
ラストシューティングを彷彿させる、ブルー1号機の上空への射撃。
以前のコラムでも書きましたが、漫画版最終話で初めてブルーのビームサーベル収納位置が明かされました。
…が、現在では陸戦型ガンダムと同じ位置にある、という設定になっているようです。
◆書き下ろしカット
全身からブーストを噴かすイフリート改。
実にイカしたシーンですが、この見開きは単行本収録の際に書き下ろされたページです。
上のシーンに繋がる、直前のページ。単行本。
イフリート改がグレネード弾を発射して、このページは終わり。
次に、同シーンの雑誌掲載時のもの。
このページ内で1号機の頭部は破壊され、そのままエンディングシーンに繋がります。
(最終話収録の雑誌のみ所持していたので気づいたシーンです。もしかしたら、他にも書き下ろし&修正シーンはあるかもしれません)
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最終話のブルー1号機とイフリート改の戦闘は、実にカッコイイ!
ぜひコミックスを買って、読んでみて下さい!
以上で、漫画版は最終回です。
話がここで終わったのは、掲載していた雑誌「覇王マガジン」の休刊に伴うものです。
単行本としてちゃんと発売されたのは不幸中の幸いだと言えましょう。
高山氏には続きの構想もあったようで、旧コミックス版ではあとがきにて、少し触れられています。
(新装版には残念ながら未収録)
さて、コミックスはこれでおしまい。描かれることのなかった「裁かれし者」ですが…
実は、高山氏によって描かれた「その後」のマンガが存在します!
次回は、コミックアンソロジー「ギレンの野望」に収録された、その後のストーリー。
「バニングス・レポート」を紹介します。
君は、蒼き死神の残照を見る!
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