引き続き、ブルーのEXAM発動状態の特徴である”赤目”についてです。
今ではおなじみになっていますが、原作ゲームでは”赤目”になる演出は無く、そのような設定の記述も無い。
しかしながら、ゲーム開発中当時の写真では”赤目”になっている。
これはどういうことなのか?
前回では
「ゲーム開発中は”赤目”になる設定だったが、途中で設定が変更になり、ゴーグルは緑のままとなった」と仮説を立ててました。
今回は、その仮説の補足をしつつ、原作ゲームのセールスとほぼ同時期に展開されたマンガ版、小説版について触れてみたいと思います。
あ、とりあえず先に言っておきますが、設定変更の理由についてはわかりません。
こればっかりは、開発者に直接聞かないと。
もしかしたら過去に雑誌等のインタビューで答えているかもしれませんが・・・
こちらは97年出版の漫画版ブルーの単行本の表紙(※解説1)。
こちらでは”赤目”になっています。
同じく漫画版中表紙より。
こちらもゴーグルは、赤。
そして注目したいのは、足に書いてある日付です。
拡大(※解説2)。
「MIZUHO TAKAYAMA 96.6.29」とあります。
原作ゲーム1巻の発売は、96年9月。
そう、このイラストはゲームの発売よりも前に描かれているのです。
当時、最新のガンダムゲームとして発表された「戦慄のブルー」。
おそらく、そのメディアミックス企画として始まったのが漫画版ブルーであり、
作者の高山瑞穂氏にはゲーム開発中初期の段階から詳細な資料が渡っていたと思われます。
このイラストの日付から察するに、ゲーム発売の3ヶ月前では”赤目”の設定であり、それをもとに描かれたではないでしょうか。
というわけで、ブルーディスティニーという作品の歴史で最も初期にあたるこのイラストが”赤目”という事実から、
ブルー本編であるゲーム以外のメディアから、前回立てた仮説の補足をしてみました。
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”赤目”の設定は完全に無かったことになったのか?
おそらく、97年当時の段階ではYESだろう。
その根拠として、前回にもありましたゲーム説明書のイラスト、設定資料集のイラストと記述を挙げましたが、
もうひとつ根拠があります。
それが、二つの小説版ブルーです。
皆川ゆか氏によって書かれた小説版は97年2月より執筆が始まっています(※解説3)。
そして8月に発売となった小説版において、EXAMが発動してブルーのゴーグルが赤くなる描写は、一切ありませんでした。
たった一行で解説できる現象であり、なおかつ、演出的にはとてもオイシイ設定であるに、無いのです。
そしてゲームのシナリオを担当した千葉智弘氏によるもう一つの小説版においても、”赤目”はありません。
原作ゲームスタッフによる小説でも無かったということは、”赤目”の設定が自体がボツになっていたからではないだろうか。
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これらの話をまとめると、
当初、ブルーはEXAM発動時に”赤目”になる予定であり、高山氏のイラストでも当然、”赤目”で描かれた。
そして開発途中で”赤目”の設定は変更になり、ゴーグルは緑色のままということになり、ゲーム発売に至る。
ゲーム説明書、設定資料集、小説版でも”赤目”には一切触れていないことから、この設定は完全にボツになっていた。
ということになります。
ここで、ひとつ気になる点が一つ。
”赤目”で描かれていた漫画版ブルーの初版は97年2月。
これは小説版、設定資料集発売の前である。
ブルーが”赤目”という設定で無くなっているのに、表紙では”赤目”。
そのため、これは「漫画版オリジナルの描写」であると言える。
むしろ「漫画版オリジナルの描写という事になってしまった」とでも言うべきか。
高山氏的には”赤目”の設定は「生きていた」、もしくは「設定が変更したことを知らなかった」ということだろう。
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さて、この「漫画版オリジナルの描写」。
ブルーの没設定が思わぬ形で生き残り、世に出てしまった格好となる。
この事が後に、思わぬ形で広がることになるわけで・・・
次回は、1997年以後のブルーの展開について。
さまざまなゲームに登場するようになったブルーから、どのように”赤目”の設定が普及していったかを追ってみます。
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※解説1
こちらは1997年に発売されたもの。高山瑞穂氏による漫画版ブルーは2005年に新装版で再販され、その際表紙は新しく描き下ろされている。
※解説2
なんで拡大図では文字で隠れてないかと申しますと・・・。2003年に、いわゆる「コンビニ本」で再販された際の裏表紙もこのイラストで、そっちの方が見やすかったからです。
また、漫画版は講談社より発行されていた覇王マガジン96年10月号~97年3月号で連載されました。それ以前の日付でもあるため、おそらく連載告知用、もしくは新連載のカラー表紙用に使われたイラストと思われます。
※解説3
その辺の詳細については左カテゴリ内「コラム・設定の歴史」より「ビームサーベル・ラック 収納上手はどちら? その2」を参照。
[1回]
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