※記述と写真を幾つか訂正しました時には昔の話を。
先日、古本屋にてこんな雑誌を発見しました。
1996年にメディアワークスより刊行されたゲーム雑誌「電撃SEGA EX」の創刊号。
表紙にあるゲームタイトルに時代を感じます。
(8月号、とありますが巻末によると次号発売日が7月22日、とあるので創刊号自体は6月に発売されたものと思われます)
当時の東京おもちゃショー(※1)で発表された新作ゲームの特集があり、その中に「機動戦士ガンダム外伝 戦慄のブルー」がありました。
開発時の画像やインタビューなど、なかなか興味深い記事だったので、今回はそれを紹介したいと思います。
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※以下、実際に発売された「戦慄のブルー」を「製品版」と呼びます。
特集は4P。
おもちゃショーで公開されたバージョンのROMより、ドムやハイゴッグのモーション紹介、独自のゲーム分析、インタビューが掲載されています。
以下、掲載されたゲーム画面より興味深い点を幾つか。
◆コンソール初期案
まず面白いのが、2種類のゲーム画面。
製品版でのゲーム画面は
このようなものでしたが、おもちゃショーで発表されたものは
こんな感じになっています。コンソール類が違いますね(写真がちょっと見難いですね…すいません)。
1枚目…
右上にロックオンのON/OFFを表すと思われる表示。
左上にはブースとの表示。
中央、横長の長方形に「SP.GUN」とあります。これはビームスプレーガンのことだろうか(まあ、構えてる得物は違いますが)?
長方形はそのエネルギーゲージかな?
その下には「ALART」の表示もありますね。
縦のゲージは耐久値っぽいですね。
2枚目…
ずいぶんとスッキリしています。
左上に何やら表示が。ただの演出でゲーム的な機能は無さそう?
右下にステージマップがあります。
目を引くのが、画面に映る、銃器を構えるジムの左腕。これは製品版にはありませんでしたね。
そして気になるのが、その得物。製品版ではジムコマンドが持つマシンガンが描かれていましたが、これは少し違う。
この形、仮のものだったのかな?とりあえず思い当たるフシといえばジム寒冷地仕様が持ってたマシンガンがこれに近いか…?
ビームスプレーガンと思わしき表示といい…もしかして、当初は武装変更ができる予定だったとか?
まあ、いずれにせよ、これらが洗練されて製品版の仕様になったのでしょうね。
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◆悲しきリストラ
プロモーション用と思われる、ジオン軍のシーンが2点。
森林。
製品版には森林ステージはありませんでした。
当初はMSを隠すほどの森で相手を探って戦う、というシチュエーションが想定されていたのでしょうか。
荒野。
製品版にも荒野はありましたが、この写真のような高低差はありませんでした。
また、ガウとマゼラトップが映っているのが面白い。
…が、残念ながら製品版で両機は登場していません。
(※2)
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◆稲垣氏インタビュー
続いて、当時ゲームのプロデュースを担当した稲垣浩文氏のインタビューを引用して紹介。
-我々電撃SEGA EX取材班は、バンダイの稲垣氏に対して、まず『外伝』の現在の開発状況を聞いてみた。
稲垣「ストーリーはほぼ完成しています。今はそれに合わせて、ステージごとのMSの配置や、分岐の条件等を手直ししているところですね。
実は、ザクなどを見てもらえばわかるんですが、今回使えるポリゴンの数が少なくて、もとのMSを完全に再現できないんです。
そこで、MSのモデルを作る作業を1人のデザイナーにまかせることにしました。そうすることで、『外伝』ならではのデザインの統一感を出そうと思います。
ほかにも「動き」や「フィールド」を作る作業もそれぞれ1人の人間にまかせて、最終的にプログラマーがそれらをまとめあげる、という作り方をしています」-『ガンダム』シリーズといえば「ニュータイプ」という存在は欠かせない。これは『外伝』にどのように関わるのだろうか?
稲垣「ニュータイプって扱いが難しいんですよ。それに『外伝』は1人の兵士の視点で描かれますから、彼から見て特殊な存在であるニュータイプは、シナリオにはあまり関わらないと思います。そのかわり、敵弾のスピードは早いけど避けられなくはないくらいにしてあります。そうすることで、たとえば敵弾をかわしつつ相手の背後を取ったプレイヤーが「今の動き…俺ってニュータイプ?」と感じられるような、そんなゲームにしたいんです。
そのためにも、敵MSの動きにはとことんこだわっています」-確かにMSのアクション、とくにハイ・ゴッグの動きにはこだわりが感じられる。
稲垣「ハイ・ゴッグの動きは、OVAの『0080』を見たときから絶対にポリゴンで再現したい!と思っていました。もっとモーションをつけたいぐらいです。あ、でも誌面からじゃわからないですね(笑)。とにかく、一日でも早くユーザーのみなさんに見て、プレイしてもらうためにがんばっています。期待して待っていて下さい」・気になった点を幾つか…
>分岐の条件等を手直ししているところですね。もしや、展開に分岐があって複数のストーリーが?
…と思ったんですが、これはおそらく成績によって3巻目のエンディングが変わることを指しているかと。
各巻のデータを引き継いで云々が意外に大変だった、という趣旨の話が別の機会ででていましたので。
>それに『外伝』は1人の兵士の視点で描かれますから、彼から見て特殊な存在であるニュータイプは、シナリオにはあまり関わらないと思います。ストーリーにニュータイプは大きく絡んでいましたが、ゲームシナリオ的には、確かに大きな関わりはありませんでしたね。
EXAM関連も、ユウ自身にはアルフからの報告が主で、ミッションも「よくわからないが凄いシステム、EXAMを駆使して敵基地を叩け!」とか「敵EXAM研究施設を破壊しろ!」という感じでしたし。
その辺を大きく膨らませ、ユウにニュータイプを大きく関わらせた小説版、漫画版はよく出来てたんだなぁ…と、再認識。
>たとえば敵弾をかわしつつ相手の背後を取ったプレイヤーが「今の動き…俺ってニュータイプ?」と感じられるような、そんなゲームにしたいんですその真骨頂が外伝2の対イフリート改戦だな…何度も敗北を喫しつつ段々とイフリート改の動きに慣れた後、反射的にミサイル連射を避けつつジャンプ、背後をとって斬りつけが成功した時などアドレナリンがドバドバと(以下思い出語りなので省略)
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ところで、今回の記事で面白かったのが、雑誌ライターによる解説。
当時まだ新鮮な技術だった、ポリゴン。
冷静に分析しつつも、「最新技術によるガンダムゲーム」に対する興奮と熱い期待が滲み出ている解説がされていていました。
(特に、グリグリ動くドムやハイゴッグに興奮気味)
その他、コックピット視点でモビルスーツを自分の手でで操作できること。いち兵士として一年戦争を体験できること。『OGS』(※3)という新メディアで展開される新作ガンダムであること。文章の節々から期待感がビンビンと感じられ、、それが何だか微笑ましかったりしました。
(※4)
(※5)
そんなこんなで、『戦慄のブルー、第一報レポート』の、レポートでした。
当時のゲーム雑誌の記事は幾つか保存してあるので、また読み返して、記事にしてみようかな…。
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※1
1996年当時「東京ゲームショー」はまだ始まっておらず、新作ゲームソフトの発表は東京おもちゃショーで行われていた。
※2
なお、マゼラ・アタック、マゼラベースも未登場です。
…しかしながら、後の「コロニーの落ちた地で・・・」では分離機構まで見事に再現したマゼラ・アタック、上空を悠々と飛行する巨大なガウが登場したりして、リストラの雪辱(?)を果たすこととなりました。
※3
『OGS』とは、オリジナル・ゲーム・ストーリーの略。0080、08小隊などのOVAシリーズのようなオリジナルストーリーを、ゲームで展開しようという試み。本作『機動戦士ガンダム外伝』にて初めて使われた造語です。
この『OGS』という名称は定着しませんでしたが、そのコンセプトは『』コロニーの落ちた地で…』など、後世の外伝に受け継がれていくことになります。
厳密には、「OVAシリーズのように連作で定期的に展開されるゲームである」ことがOGSの定義になります。
そういう意味では単品で完結している以後の外伝シリーズは完全にコンセプトを引き継いだ、とは言えませんが…
この辺の話はいよいよ脱線になるので、またの機会に。
※4
プレイステーション版の「機動戦士ガンダム」でも同様の期待はあったのではないでしょうか。機会があれば、その当時の記事など漁ってみたいですね。
※5
期待の高さゆえか「こんなことが出来そうだ!」といった、ライターの予想が幾つかありました。
例えば、『建物の上から周囲の状況を確認』『ビルの合間から狙撃』『ミッションの遂行内容によってストーリーが変化』など。
実際の製品版ではこれらが実現出来ているとは言いがたかったですが、後年のガンダムゲームではどれも実現できていますね。
何とも感慨深いです。
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