『覇王ゲームスペシャル[81] 機動戦士ガンダム外伝Ⅲ 裁かれし者
テクニカルガイドブック』
千葉智宏氏によるオリジナル短編小説「蒼き騎士と眠り姫」より
今回は第2、3章をお送りします。
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2.マリオンⅡ
わたしがクルスト博士の変化に気づいたのは、ほんの数日前。
いや、本当はずっと前から気づいていたのに、
否定していただけかもしれない。
実験がフラガナン機関の上層部に役立たずの烙印を押され、
精神的に追い詰められていく博士。
その心が、わたしの中に流れ込んでくるのだ…
(ニュータイプは、なぜ高い戦闘能力をもっている?
)
(戦うべき相手がいるから?)
(それは、我々の事なのか?人類を滅ぼすために生まれたのか!?)
(それならば、我々が利用してやろう)
(”EXAM”で、ニュータイプに裁きを…)
わたしは人類に死をもたらす存在なの?
わたしが育てた”EXAM”は、いわばわたしのコピー…
このシステムが、効率的に人を殺すためにシステムだとすれば、
わたしは、やはり、死神なの…?
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「どうしたマリオン。制御が甘いぞ!」
ニムバスが叫ぶ。
今は、実験に集中しなくては…
「加速が…私を殺す気か!」
殺す?わたしは、ニムバスを殺そうとしているの?
”コイツヲ コロスノカ?”いいえ、イフリート改。違うわ!
”ダレヲ コロスノカ?”
”ワタシハEXAM ママハボクニコロシカタヲ オシエテクレル”
”モット、データヲ…ママノヨウニ ウマクコロセル ヨウニナルタメニ”違う、違う!
否定するたび、”EXAM”という存在はわたしに重くのしかかる。
わたしが育て上げた怪物。
わたしの分身。
死神であるわたし自身。
わたし、わたしは…
「いやー!」-----
3.アルフ
「そして、”EXAM”は完成したわけだ」
ジオンにブルー2号機が奪われ、それを追ってこの実験コロニーにやってきたわけだが…
そこでオレは、”EXAM”の謎を解明する、重大な記録を手に入れた。
・”EXAM”は、ニュータイプの少女・マリオンの精神をそのままコピーして完成した。
そして、精神が吸収されてしまったかのように、彼女は意識不明となってしまった。
・人類とニュータイプが敵対すると考えたクルストは、ニュータイプと戦うための
殺戮マシンの開発を目指した。
高い戦闘能力を発揮する”暴走”は、そのために仕組んだものだった。
・”EXAM”は、ニュータイプのサイコミュに反応して暴走するようになっていたが、
同じ”EXAM”同士で戦っても、お互いをニュータイプと誤認して発動してしまう。
EXAMは、通常、50%しか機能していない。
100%機能させると制御がきかない、暴走状態になるからだ。
だから、オレはブルー1号機とユウが戦った事件の後、博士に内緒でリミッターを装着した。
こいつがあれば、”EXAM”を5分間だけ暴走することなく
100%機能させることができる。
オレが自分で整備したブルー1号機と3号機にはリミッターがあるが…
奪われた2号機には、それが無い。
もし2号機と3号機が戦うことになったら、お互いの”EXAM”が発動するだろう。
戦闘能力は互角だが、リミッターのある3号機は、活動時間が限られてしまう。
機体とパイロットを守るためのものが、あだとなってしまったか…。
こいつは問題のあるシステムだが、改良次第では化けるだろう。
そして…コンピュータをニュータイプ化させるという発想は面白い。
…同じことを人間に応用できないだろうか?
人間の脳も、一種のコンピュータだ。
機械をニュータイプ化するより、脳そのものにニュータイプのデータを
書き込んでやるこが可能ならば?
…やはりオレは天才だ。
ジオン側の”EXAM”のデータは完全に抹消し、
2号機を倒したら、残された”EXAM”は3号機のみ。
これで研究を続けられる。
クルスト博士、あなたの遺志を継ぐつもりはありませんが
あなたの遺産は、うまく使わせてもらいますよ。
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◆2.マリオンⅡより
EXAM開発中の事故、その真相。
自分は死神なのか?というマリオンの苦悩が描かれます。
上画像の、イフリート改を見上げて微笑むマリオンと対比するように、
我が子ともいえるイフリート改…そして”EXAM”が殺しの技術を求める辛辣な描写があります。
マリオンの絶望の深さが窺えます。
◆3.アルフより
原作ゲーム、ステージ3と4の間に位置するストーリーですね。
”EXAM”の真実に気づいたアルフ。
そして、『機動戦士Zガンダム』でお馴染みの”強化人間”へ至る発想の、原点をもちます。
アルフは、戦後、強化人間プロジェクトに関わるという設定がありますが、
それに関わる描写ですね。
人間の脳にニュータイプのデータを書き込む、なんていう
クルストも真っ青なマッドな発想。
千葉版のアルフはかなりトばしてます。
(それでいて、次の章ではツンデレのデレな面が見えたりしますが)
話は少しそれますが…
皆川ゆか版のアルフ像は千葉版とよく似ていますが
一つだけ、決定的に違うのがこの"強化人間”という発想です。
皆川ゆか版のアルフは、ニュータイプに対しある種のロマンを感じており、
ニュータイプは素晴らしいものであると捉え、自分の憧れであるとする描写があります。
きっと、そんな皆川版アルフなら人工的にニュータイプを作るという発想は
唾棄すべきものとして映るんじゃないかな?なんて考えます。
さらに余談。
”EXAM”はニュータイプのサイコミュに反応する、との記述があります。
つまり、ニュータイプがサイコミュを介して兵器を使用した際に
EXAMは反応するのであって、
ニュータイプそのものを感知するわけではない、ということでしょうか。
たとえば、ニュータイプが通常兵器しかないMSに乗って
ブルーと対峙してもEXAMは反応しない、ってこと?
つまり、ガンダム&アムロ相手ではブルーは暴走しない…?
あれ?でも、ニュータイプ自身が発する感応波にEXAMは反応する、という
設定もどこかで見たことがあるような…
後日詳しく調べてみます。
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次回は第4章『ユウ』をお送りします。
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◆近況とか
今更ながら『銀河英雄伝説』にハマりました。
艦隊戦の駆け引き、政治の駆け引きがものすげー面白い。
面白いとは聞いていたが…ここまでとは!
こんな名作を今までスルーしていた自分が恨めしい。
(いつもそんな事言ってる気もするが)
現在、第40話まで見ました。
長編だとは聞いてますが、これ、あと何話あるんだろ?
え?あとたった70話?んでもって外伝もあるって?
…ゴクリ
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