『覇王ゲームスペシャル[81] 機動戦士ガンダム外伝Ⅲ 裁かれし者
テクニカルガイドブック』
千葉智宏氏によるオリジナル短編小説「蒼き騎士と眠り姫」が収録されています。
全5章+α。
マリオン、アルフ、ユウの視点で構成、
高山瑞穂による書き下ろしカット&イラストがあります。
今回は第1章をお送りします。
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1.マリオンI
私の名は、マリオン・ウェルチ。
人々から”ニュータイプ”と呼ばれる存在。
ジオン軍のフラナガン機関に所属する、軍人だ。
…といっても本当の戦闘を経験したことは、無い。
この機関で、私はクルスト・モーゼス博士の下、
”EXAM”というシステムの開発に携わっている。
これまでニュータイプ関連の兵器といえば
その戦闘能力を最大限に活かすための、ハードの開発がメインだった。
それに対し、この”EXAM”システムは一般の兵士が操縦しても
ニュータイプと同じ動きができるよう、
マシンを制御するためのOSを開発することを目的としていた。
もともと、ニュータイプが高い戦闘能力を示す要因は、
理解力と認識力の高さにあると考えられている。
確かに、私はビームや弾が来るちょっと前に、”分かる”ことができた。
それをコンピュータに教えるのが、私の仕事だった。
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表向きは廃棄処分とされるコロニーの中、
”EXAM”搭載機であるイフリート改の実験は行われている。
「くっ、これしきのこと!」
イフリート改の急旋回。その強力な遠心力に、ニムバスは耐えている。
そして、彼の必死さが、わたしにも伝わってくる。
”イフリート。いい子だから、旋回速度を下げて。
慌てなくても、ちょっと上体をひねれば、怖いミサイルはあなたの横をすりぬけるわ”
わたしのサイコミュ・コントロールを受け、イフリート改は指示に従う。
”いい子ね。今のタイミングを忘れちゃだめよ”
それは、何を知らない赤ん坊を育てるのにも似た作業。
私の動きをどんどん吸収していくイフリート改は、
私の子供のようなものだった。
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私は本当は、戦争には反対。
でも、このシステムが完成すれば、ジオンをはじめ
宇宙に住む人々が、平和を勝ち取ることができる。
それに…
博士は、貧しい宇宙移民の子だった私を引き取り、大切に育ててくれた。
世界から戦争を無くすため。そして、博士に報いるため。
私は希望と理想をもって、この研究に従事していた。
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◆1.マリオンIより
マリオンの視点で語られる”EXAM”開発前史。
EXAMシステムがどういうものかが詳細に語られています。
技術的な面まで言及しているあたり、
彼女がどれだけ研究について熟知していたかが伺えます。
この章で語られたEXAMに関する解説をまとめてみました。
・EXAMシステムの使用には専用の大型コンピュータと、冷却システムが必要。
ゆくゆくはOS化して、通常のMSのコンピュータにインストールするだけで
使えるようにするのが目標である。
・モビルスーツは、人間的な動きを再現するためのさまざまな動きがプログラムされており、
パイロットは状況にあわせて適切な動きを指示する。
マリオンの仕事は、それをさらに適切なものにすること。
サイコミュを通して”EXAM”システムにニュータイプ的な動きを指示し、
それを記憶させていく。
例えば”ミサイルを避ける動作”なら、
通常はパイロットが避けることを目的としてMSに方向を指示し、
MSはそれに従って移動をすることで、結果的に”避ける”という動作が完了することになる。
”EXAM”の場合は、パイロットからの指示を「ミサイルを避けるためのもの」であると
瞬時に理解・判断した上で、より適切な避け動作を行うことができる。
→この辺は、
デベロッパーズでミオンとテオがやっていた作業がイメージとして近いかもね。
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次回は『2.マリオンⅡ』をお送りします。
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