『覇王ゲームスペシャル[71] 機動戦士ガンダム外伝Ⅱ 蒼を受け継ぐ者
テクニカルガイドブック』
より、千葉智宏氏によるオリジナル短編小説「蒼き騎士の探求」をお送りします。
今回はエピソード3、4です。
-----
3.対決II
カリフォルニアベースに到着した時には
友軍は既に全滅したか退却してしまったようだが、私にとっては好都合だ。
これで、誰にも邪魔されず戦うことができる。
ミノフスキー粒子が充満した戦場を突き進み、ついに奴を発見した。
全身を蒼く塗装したモビルスーツ…。
間違いない。
クルストは自分のマシンを蒼く塗装するのが趣味で、
イフリート改も蒼く塗装された。
ただし、イフリート改は両肩のみ赤く塗られている。
私の倒した敵の返り血を示す、深紅だ。
連邦の蒼き死神!貴様の返り血も、そこ加えてやる!
同じ"EXAM"同士が共鳴したのか、マシンが低い唸りを上げ、
ついに両機は激突した!
ミサイルの応酬、そして近接での攻防。
敵のパイロットも、なかなかやるようだ。
"EXAM"の得意とする機動力を活かした高速戦闘が繰り広げられる。
…決着を着けたのは、敵機の攻撃だった。
ビームサーベルの三段切りをヒートサーベルで受け流したものの、
大きなダメージを受け、機体は片膝を着いた。
勝ち誇るように近づく、連邦の蒼い機体。
「ここで死ぬわけにはいかんのだ!」
その時、私の叫びに応えるように
イフリート改は腕を上げ、グレネードを発射した!
弾は敵機の頭部を吹き飛ばし、
機体は私の意志と関係なく撤退を開始した。
私に、騎士としての誇りを捨ててまで生き残れというのか!?
…よし、わかった。
お前を作り出したクルストに復讐の鉄槌を食らわすまで、
生きのびてやろうじゃないか。
私は機体から脱出した。
イフリート改はそのまま前進し、数百メートル先で爆発した。
数時間後、部下に救出された私は
連邦のEXAM研究所を発見したとの報を受ける。
私の心に一筋の光が差し込んだ。
「ついに見つけたぞクルスト…首を洗って待っていろ!」
---
4.襲撃
研究所の襲撃は、あっけなく終わった。
護衛のモビルスーツはなく、
EXAMマシンにもパイロットはいなかった。
クルストを発見した時、奴は銃撃戦による負傷で、既に虫の息だった。
久々に会ったクルストは、昔と変わっていなかった。
その目に宿った狂気を除けば…。
「ニムバス!貴様、なぜこんなことを!」
「あなたは祖国を裏切ったのだ。私は、裏切り者を許さない」
「バカな男だ。自分の狭い視野でしか、物事を考えていない。
私は人類のことを考えて、亡命したのだ」
多量の出血により、博士は顔が蒼白になっていく。
しかし、瞳に宿る狂気の炎は、さらに強く燃え盛っていった。
「連邦に勝利をもたらすことが、人類のためだと言うのですか!?」
「その考えが『狭い』というのだ。
”EXAM”は、単なる戦争の道具ではない。
”EXAM”は、人類に残された最後の砦。これなくしては、人類は滅んでしまうのだ。
…君には、分かるはずもない。
あのマリオンですら、理解できなかったのだ。
…いや、本当は分かっていたのかもしれん。だから、あの日…」
「暴走事故のことか」
「そうだ。あの暴走により、全てはうまくいった。
アレを再現することが、システムの完成を意味するのだ。
イフリート改に搭載されたシステムの完成度は高かったが、
私の望む真の目的には、合わないのだ。
…連邦に来て、システムは完成直前まで至った。
”ブルー”に搭載した”EXAMシステム”なら、
真の敵と戦うことができる。
…ニムバスよ。”EXAM”の真の力と目的を知りたいなら、
あのブルー2号機に乗るがいい。
きっと”EXAM”が、お前に正しい道を示すだろう…」
そしてクルストは、息を引き取った。
貴様の望み通り、ブルー2号機は私がいただこう。
だが、貴様の目指した真の目的のためとやらには、使わない。
私は、私の信念に従って戦うのだ!
…そう、私はジオンの誇り高き騎士、ニムバス・シュターゼン。
誰のためでもない。信念の命ずるままに戦うのだ。
-----
※当時の表記に合わせて
”キャリフォルニア・ベース”は
”カリフォルニアベース”としています。
また、原文のセリフを要約してまとめたので
クルストが虫の息の割には饒舌に見えちゃうのはご容赦ください。
◆3.対決IIより
・ブルー1号機へのとどめ
原作ゲームではニムバスの「マシンの性能差か…しかし!」のセリフと共に
グレネード弾を発射し、頭部を破壊していましたが、
短編小説版ではイフリート改…というか”EXAM”の意思で攻撃したようです。
これはつまりマリオンの意思がやったことなのだろうか?
ニムバスを助けたかったのか、
それとも”EXAM”同士の戦いを続けさせることで
システムの完全な消滅を望んだがゆえの行動だったのか?
考え出せば詮無きことですが、そんな妄想をしてみるのも楽しいかと。
◆4.襲撃より
・ニムバスが2号機を得た経緯について、他メディアとの比較。
この件は原作ゲームでは詳しく語られず、アルフからの報告で終わっていました。
小説版では、おそらく自分が殺されることも分かった上で
クルスト自身が2号機と研究所の所在をニムバスにリーク。
2号機をニムバスに託すため、フル装備状態で待機させていました。
これは連邦での研究に限界を感じたことと、
EXAMを真の目的にユウは適さないと判断したための行動でした。
漫画版ではダイジェストでしか描かれていませんが、
クルスト自身はニムバスが”EXAM”マシンを使用することを
危惧していた様子でした。
今回の短編小説版では、研究所の襲撃は予想外としても、
ニムバスにブルー2号機を託した、という経緯は小説版に似ている印象を受けます。
-----
次回はいよいよ終盤。
『裁かれし者』より、『蒼き騎士と眠り姫』をお送りします。
お楽しみに。
-----
その他の話
・『機動戦士ガンダム カタナ』連載開始!
『連邦愚連隊』の曽野由大xクラップスによる新連載開始です。
先月発表された仮タイトルは「機動戦士ガンダム刀 実録0084」でしたが、
上記のように決定しました。
宇宙世紀0084年。
一年戦争の傷跡深く残る地球では
戦後復興も遅れ、経済格差が広がりつつあった。
地球連邦軍 対破壊工作特殊捜査旅団
”BGST(バーゲスト)”が
連邦系カジノの現金輸送車の襲撃事件を追う中、
一人の少年が部隊の前に表れる…。
部隊は通称”任侠部隊バーゲスト”と呼ばれ、
まるでヤクザ映画のノリ。
ええ、どうみてもヤクザですw
主人公、イットウ・ツルギ。
少年のように見えるが、
実は連邦軍少佐の22歳。
かつてのバーゲスト隊長の息子である。
迫力の戦闘シーンも健在!
存続の危機が危ぶまれる部隊を
立て直すヤクザの若頭の人情モノ、ってな感じで話は進みそうです。
今後の展開に期待してます!
-----
その他近況とか
・モンスターハンター3
ガンランスがないのがやっぱり物足りない。
・アイドルマスターDS(ディアリースターズ)
なにこれ超おもしれぇ。
[1回]
PR