「バニングス・リポート 蒼の残照」
U.C.0079 12月。
星一号作戦が発動し、連邦軍によるソロモン攻略戦が開始されようとしていた頃、
1機のシャトルが地上のジオン基地から打ち上げられた。
シャトルの目的地は、戦略的価値の無いはずの廃棄コロニー。
地球から撤退するジオン軍がソロモン、あるいはア・バオア・クーへ終結しつつある状況で
その動きを不信に捉えた連邦軍は、サウス・バニング中尉を廃棄コロニーの調査に向かわせる。
バニングは部下のベイト少尉、モンシア少尉らと共に”ジム”でコロニーに潜入する。
そこで彼らが見たのは、破壊された、多数のジオンのモビルスーツだった。
しかも、その残骸にはビームサーベルによる傷跡があった。
友軍機によるものなのか?そう思いながらも危険を感じるバニング。
その時、近くで爆発が起きる。
炎と煙の中に浮かぶ1機のMSの影。攻撃を加えようとするモンシアを制し、機体をよく見ると…
それは、ガンダム・タイプのモビルスーツであった。
こちらを向く、”ガンダム”
そこへ、通信が入る。
「ユウ!ヤツだ!2号機は外にいるぞ!!」
(ユウ…?それがパイロットの名か?これをあいつが1機でやったというのか?)
通信を受けた”ガンダム”は、コロニーの外へ飛び出していく。
それを追う、バニング。
そして、彼らはコロニー片の漂う宇宙空間で戦う、2機の”ガンダム”を目撃する。
1機は白、もう1機は蒼。
カメラが追いつかない程のスピードで繰り広げられる、激戦。
それはまるで戦うこと自体を楽しんでいるかのようだった。
もはや『戦争』でなく『決闘』。
その様子に、バニングは戦慄する。
白いガンダムのビームライフルが蒼い機体を撃ち抜く。
そして、爆発寸前の蒼いガンダムは白いガンダムに掴みかかり、双方が大爆発をした。
帰艦したバニングは報告書を上官に提出する。
「それで、勝ったのはどちらだったのかね。ムサシか?コジローか?
「それが、双方とも爆発してしまいまして…相打ちかと」
それを聞いた上官は報告書をシュレッダーにかける。
「バニング君。このことは他言無用だぞ わかったな?」
艦隊は、ソロモンへ向かう。
戦いは続く…。
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「バニングス・リポート」は1998年に「株式会社スタジオDNA」より出版された、
「機動戦士ガンダム ギレンの野望 コミックアンソロジー」に収録されました。
高山瑞穂氏によって描かれたものであり、漫画版ブルーディスティニーの最終回といえます。
ストーリーは、原作ゲーム「裁かれし者」のステージ4,5が下地となっています。
EXAM事件には関係の無い、サウス・バニングという第3者からの視点で見る「裁かれし者」。
そのため、作中では「ブルーディスティニー」という単語は登場せず、あくまで「ガンダム」と呼ばれます。
こういう構成もなかなか面白いですね。
◆高山瑞穂版「ザ・ブルーディスティニー」の結末、その断片。
ユウ、ニムバスらの戦闘中の会話もあります。そのすべてを抜粋してみましょう。
(あくまでストーリーはバニングの視点であり、会話シーンとして詳細に描かれたわけではありません)
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「はははは!うれしいぞユウ。キサマとの戦いの中でEXAMはますますパワーをみなぎらせている!」
「ニムバス!お前はなぜ解ろうとしない!彼女は…マリオンは解放されたがっているのに!」
「フフフ…キサマこそ解っていないようだな。マリオンがEXAMから解放されるとはどんな意味なのか」
「彼女がそれを望んでいる!だからオレはそれを実現させてやりたいだけだ!」
(ビームライフルの直撃)
「マリオンが…彼女がお前を選んだ…ということか…」
「ニムバス…今からでも遅くはない。協力してほしい、彼女を助けるために…」
「だが私は認めん!ふははははっキサマも一緒に来てもらうぞ!マリオンと共になあ!」
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「マリオンの解放」という確固たる目的を持ち、決戦に挑むユウ。
そして、最後の最後までニムバスを見限らず、彼に協力を申し出るユウが描かれます。
現在、一般的に認知されたブルーのストーリーは主に小説版(及び、それを下地とした各種ゲーム)からの印象が強いため、
このユウの行動がとても意外なものに感じられます(※余談1)。
漫画版「裁かれし者」が、ちゃんと描かれていれば、最後の決戦はどのように描写されただろうか?
そして、どのような結末を迎えていたのか?
その断片を、ここのシーンから伺うことができるのではないでしょうか。
◆バニングの自問
バニングは劇中にて「人は戦うことで進化する生き物なのか?」ということについて自問しており、炎の中から浮かぶブルー3号機の姿を見て「その進化の果てに辿りつくのは、地獄かもしれない」と、一つの結論を出します。
(※余談2)
◆不死身の第4小隊
サウス・バニングを始め、「機動戦士ガンダム0083」よりアルファ・A・ベイト、ベルナルド・モンシアが登場。
ア・バオア・クーの戦いを経て、後に「不死身の第4小隊」と呼ばれる彼らですが、第4小隊の最後の一人、チャップ・アデルはなぜか未登場です。
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これにて、高山瑞穂氏による、漫画版ブルーディスティニーはお仕舞いです。
1ヶ月以上かけて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
正直、自分の文章力の無さから、漫画版の面白さや漫画版独特の要素など、どこまで伝え切れたかは解りません。
やはり、百聞は一見にしかず。
今なら新装版も定期的に書店に並び、入手し易いと思いますので、ぜひ漫画版を買って、楽しんでみてください!
「裁かれし者」編については、このような変則的な形となってしまったのは、残念なところ。
収録されたのもアンソロジーであり、現在は入手困難となっています。
(古本屋などでは、たまに見かけますが…)
しかし、物語が形となり一応でも決着が着いたこと。これも不幸中の幸いと言えるでしょう。
願わくば、「裁かれし者」編まで描ききった「完全版」が、
いつの日か出版されますように…。
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※余談1
皆川ゆか小説版では、どうだったのだろうか?
小説版では、最後の決戦では兵士としてでなく一個人として「ニムバスを殺す!」と思い、戦っていました。
漫画版と小説版。
それぞれで語られたストーリーの基本は同じでもその味付けは大きく違うのであり、それぞれのユウの心情が違うのも、また道理である。
ましてそれが、2号機対3号機という総決算のシーンであるなら、なおさら。
同シーンでありながら、全く違うユウの心情。
それを比較して読んでみるのも、また一興かと。
※余談2
この問いについては、偶然にも「GUNDAM LEGACY」のユウ・カジマのエピソードでも触れられています。
若干、論点が違いますが「人は戦わずにはいられない生き物なのか?戦いの運命は永遠に続くのか?」というもので、
ユウは落下するアクシズに取り付く連邦・ジオンのMSたち、そしてνガンダムから放たれた光の中で、一つの結論を見出しています。
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